SPOOKY

阪急MEN'S TOKYO イベント出店での出来事
 
聞き覚えのある声に振り向くと、かつて一緒にニューヨーク、ヨーロッパを旅をした友人が突然やってきた。 当時、二十歳そこそこの遠方から移り住んできた青年は以前営んでいた店に通うようになり、いつしか親しくなった。 店の方向性に悩んでいた時期、旅に出たくなりニューヨーク行きのチケットを取った事を知った彼が「俺も一緒に行っていいですか?」と訊いてきたのが、一緒に旅をするきっかけだった。 今思えば、そのニューヨーク旅で初めてジュエリーを一緒に買い付けたのが、 ジュエリーを取り扱う原点だった事に気がついた。 彼は「俺も買いたいから全部買わないでくれ」と言いながら スネークの目にエメラルドを嵌め込んだゴールドリングを買った事を、今でも鮮明に覚えている。 当時は貧乏旅行でセントラルヒーティングが効かない安宿で服を着たまま寝た経験も今では笑い話。 彼にとっては初めての外国。 右も左もわからなかった彼が帰国後、語学を猛勉強して海外へ渡った。 そして、スペシャリストになる夢を叶えた彼は少し前に帰国した事を話してくれた。 彼の傍らには一緒に来た女性が話を微笑ましく聞いていた。 川沿いの花見客で賑わう都内の閑静な住宅地に、彼等の城を手に入れた事を嬉しそうに話してくれた。 変わらない、ひょうひょうとした口調。 思わず嬉しくなって「相変わらずだなー」と彼に言うと、 返事はなかったが、照れながら嬉しそうな表情。 平坦な道のりではなかった事は言わなくてもわかっていた。 あの時のスネークのリングが気になって尋ねた。 最初はとぼけたが、傍らの彼女がすぐにリングの事に気が付いた。 慌てて彼が言った「あーあれ、今でも時々着けてる」 来店して下さった皆さまのストーリーの原点になる事を願います。